セイバーメトリクス入門するカープ女子

社会に出ると理不尽な扱い受けること、多いですよね。バイアスだらけの曖昧な根拠で反対されたり責められたり。
そういう経験を重ねるうちに、数字で示される明確さに惹かれるようになりました。

高校数学は完全に捨てて某大学文学部へ一直線だったバキバキ文系女の凛子は、むちゃくちゃ後悔しているのです「数学もっとがんばっとけば・・・( ´•௰•`)」

最近は、理数系への憧れが高じて統計学を独学したり(「マンガで分かる~」読んでるレベル)。と、なると必然的に興味を持ってしまいますよね、それを野球に応用した『セイバーメトリクス 』

「セイバーメトリクス入門」を買う

ネットで情報漁るのもいいけど、とりあえず一冊読んどこ。選んだのは「セイバーメトリクス入門|蛭川皓平 著/岡田友輔 監修」(水曜社)。

他書に比べて出版年が新しかったこと=掲載データが新しかったことが購入の決め手。

『OPS 』『WAR 』 『WHIP 』 なんかは有名ですよね。特にOPSは計算式も簡単だし、数値の意味も捉えやすい。
凛子もシーズン中マメにチェックして「セイバー分かってる気分」になってました。
が、それだけじゃとても足りなかった( ̄▽ ̄;)!!

【セイバーメトリクス|主な指標】

  • ピタゴラス勝率 → 得点²÷(得点²+失点²)
  • 得点期待値
  • 得点確率
  • 得点価値
  • 勝率付価値(WPA)
  • RC → (安打+四球)×塁打÷(打数+四球)
  • 加重出塁率(wOBA) → {0.7×(四球+死球)+0.9×単打+1.3×二塁打+1.6×三塁打+2.0×本塁打}÷(打数+四球+死球+犠飛)
  • 打撃傑出度(wRC+) → 創出得点÷打席÷(リーグ総得点÷リーグ総打席)×100
  • 守備得点(UZR/DRS)
  • パークファクター → (本拠地球場での試合あたり得点+失点)÷(他球場での試合あたり得点+失点)

・・・などなど

各指標の意味するところは、当書籍でご確認いただくとして、この難しい計算式を伴う『セイバーメトリクス』は、一体なぜ生まれ、誰によって何のために活用されているのでしょうか? 

・・・みたいなセイバーメトリクス解説をしようと思ったんですが、本に書いてること丸写しして終わりそうなので、「セイバーメトリクス入門」を読んでの私なりの感想を述べる、という方向で当記事は作成させていただきます。

戦術論と選手評価論

「セイバーメトリクス入門」の読みどころは、セイバー視点で語られる<戦術論><選手評価論>の二つ。

<戦術論>について何が書かれているか。以下、もくじから引用します。

送りバントは有効な戦術か/盗塁の利得と見えない力/敬遠という選択/勝負強い打者は存在するか/どんな打順が最適か/年齢とパフォーマンス/打たせて取るピッチングは存在するか

「セイバーメトリクス入門」もくじより

どうですか? ちょっと興味沸きますよね!

セイバーメトリクスは、経験論やなんとなくのイメージ、みたいな曖昧なものを一切排除して、データ(数字)による客観的観測のみを採用し、これらのテーマに迫ります。

正直、凛子は目から鱗、というか「えーーーー…(´·×·`)」っていうがっかり結論が多かった。

「そんなこと言わないでー夢なくなるよー」みたいな。セイバーさん理論クールすぎる!

詳しくはネタバレになるので(って、まあネットに情報溢れてますけど)控えますが。とはいえ、長年まことしやかに語られていた都市伝説のタネ明かしをこっそり耳打ちされたような、そんな面白みがあります。

けど、 “打順”についての常識が打ち破られたのは哀しかった。首脳陣になったつもりであれこれ妄想して一番楽しいのは“先発ローテ”でも“継投”でもなくやっぱ“打順”だもん。その楽しみを奪われた…。

<選手評価論>には納得の結果が

従来の主な評価指標は…

  • 打撃 → 打率、本塁打数、打点
  • 走塁 → 盗塁
  • 守備 → 失策数
  • 投手 → 勝利数、防御率

など。

セイバーメトリクスは、これらの指標は選手を評価する上で意味がないと切り捨てます。
セイバーメトリクスの選手評価は「いかにチームの勝利に貢献したか?」が大前提。

例えば同じ“本塁打”を打つにしても“同点の9回”と“5点差の4回”では、その重みが違うでしょ、という立場を取ります。

【セイバーメトリクス|打撃指標】

  • 打撃得点 → 0. 44×単打+0.77×二塁打+1.12×三塁打+1.41×本塁打+0.29×四球+0.30×死球-0.25×(打数-安打)
  • 加重出塁率 → {0.7×(四球+死球)+0.9×単打+1.3×二塁打+1.6×三塁打+2.0×本塁打}÷打球+四球+死球+犠飛
  • OPS → 出塁率+長打率
  • RC
  • wRC → (打撃得点+リーグ総得点)÷(リーグ総打席×打席)

などなど。

各指標の意味は省略させていただきますが、これらの指標から観測したとき、一体どの選手が優れているのか? 気になりますよね。

書籍にはランキング(2019年シーズン実績に基づくセ・パ別)が発表されています。結果は概ね予想通りというかイメージ通り。

それにしても、うちらの四番は凄いな、って再確認できて満足。

走塁を評価する

これも興味深いですよね。選手に対して、「脚が速い」「盗塁が上手い」「打球判断が早い」みたいなイメージは持っていたりしますが、その真相を数値で見える化しちゃってるわけです。

走塁の評価は「盗塁」と「盗塁以外の走塁」に分けて考えます。評価軸はいかに得点に貢献したか。

【セイバーメトリクス|走塁指標】

  • wSB=A-B×C
    A=(盗塁×盗塁得点)+(盗塁死×盗塁死得点)
    B={(リーグ総盗塁数×盗塁得点+リーグ総盗塁死×盗塁死得点)÷(リーグ総単打+リーグ総四球+リーグ総死球-リーグ総故意四球)
    C=単打+四球+死球-故意四球
  • 走塁得点=wSB+進塁得点(UBR)

個人的に注目したのは『走塁得点』の算出に使われる『進塁得点(UBR)』

例えば一塁ランナーが打者のライト前ヒットで、ニ塁で止まるか、三塁まで進むか。チームの得点可能性を大きく左右するプレイです。

従来、「数字に表れないチームへの貢献」とされてきたこうしたプレイを数値化しています。

優れた進塁に脚力はもちろんですが、打球速度や方向、守備能力を加味して進塁を判断する「野球センス」がとてもとても重要だと思います。
また、三塁コーチの能力も不可欠(三塁コーチの能力も数値化して加味する必要あるかも?)。

と、いうことで『進塁得点(UBR) 』 がとても気になった凛子ですが、ランキングを確認すると…やはり、なるほど、という結果。

「次の塁を狙う」を徹底して意識づけしているカープはさすがです。セ・リーグ10傑に4人の選手が名を連ねています。そしてやはり…うちらの四番は本当に素晴らしい!!

その『進塁得点(UBR)』と盗塁を評価する『wSB』を合わせ「走塁」を総合的に評価する指標が『走塁得点』になるわけですが、そのランキングを確認すると…これもまたイメージ通り。

各選手の順位は変動していますが、進塁得点ランキングと同じくカープの選手は4人がランクイン。「脚力を生かせてない」「実は走塁がヘタ」「ヘラヘラするな」など、なにかとファンから叱責されがちなあの選手も健闘してますよ。

守備を評価する

従来は「肩が強い」とか「動き出しが良い」「守備範囲が広い」など、結構主観に左右されながら語られてきた守備評価。セイバーさんも客観的に評価することに苦労しているようです。

【セイバーメトリクス|守備指標】

  • UZR

有名ですよね。「同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べてどれだけチームの失点を減らしたか」を表す指標です。

「失点=相手チームの得点」を防いだかに焦点を当てていて、やはり「得点」を基点に評価するというスタンス。

ポジション別にランキングが掲載されていました。

『UZR 』の内訳として「併殺奪取」「守備範囲」なども数値化されています。

イメージ通りの結果を眺めつつ、守備範囲の衰えに寂しさを感じる選手もいたりしますね。

左翼手で1位に輝いたのは、昨年内野からコンバートされたばかりのカープのあの選手。2位以下の顔ぶれを見ると「…」。やっぱ左翼ってレベル低いの・・・?

上記のように『UZR』は、ポジションごとに選手同士を比較することによって評価の優劣を見える化していますが、全ポジションをがっちゃんこして守備能力を測るための『守備位置補正値』なる謎の係数も存在します。すげえなセイバーさん。

投球の評価

いよいよ投手編。もちろんチームへの勝利の貢献が評価軸。

投手が責任を負える部分だけから評価を行うことが必要となります。

従来の評価方式である「勝利数」「防御率」は、投手の責任範囲外の要素が多く(勝敗は得失点で決まる。投手が負えるのは失点のみ など)、正当な投手の評価にはならない、という考え方です。

そしてこの「投手の責任範囲」という部分。

凛子的には、ここが最も衝撃的な”セイバー理論”だったのですよ! 

「えーーーっ!!! それ投手の責任じゃないのーーー?!」

野球ファンなら誰だって確実に。「えーー! 山ちゃんと蒼井優?!」以上に驚きます(← 例えヘタ)。

【セイバーメトリクス|投球指標】

  • FIP → {13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与四球)-2×奪三振}÷投球回+3
    ※厳密には3の部分はFIPの平均値と防御率の平均値が一致するよう、リーグに合わせて微調整する
  • WHIP → (被安打+与四球)÷投球回
  • tRA → 27×守備から独立した失点数÷守備から独立したアウト数

各指標に対するランキングを見ると、うーん2019年シーズンについては妥当な結果。

みんなが大嫌いな(?)あの投手とカープがむちゃくちゃ苦手にしているあの投手が1・2位独占。
カープからは頼れる助っ人と優しいエースがランクインしています♪

評価の総合

野手については、「打撃」「走塁」「守備」に分けて評価を行う手法をご紹介しましたが、、これらの指標を合わせて総合的に選手の能力を評価する方法が発案されています。

Five-tool playerを割り出そう、と、いうよりも「その選手が出場することによってどれだけチームの勝利数が増えているか」を可視化することを目的としています。考え方が決してブレないセイバーさんです。

【セイバーメトリクス|総合指標】

  • WAR

これまでに紹介した指標を総合することで、野手/投手それぞれ算出することが可能です。

ただし「平均的な選手」と比較してどれだけ「得点」を増やしたか(失点を防いだか)という数値を「代替可能水準選手(控えレベル)」と比較してどれだけ「勝利数」を増やしたかに変換する工夫が加わります。

WARランキング(総合評価|野手編)

10傑にカープから3人。全カープファン納得の3人です。「チームの勝利に貢献した選手」を可視化し、この3人の名前が明示されたことには感動を覚えます。大げさじゃなくて涙出そう…。そしてうちらの四番はやっぱりとんでもないです。本当に誇らしい!!

ちなみに10傑のチーム内訳は「C:3人 / G:2人 / T:1人 / D:2人 / Ys:2人」と、なっています(よし、6球団いるな)。

WARランキング(総合評価|投手編)

10傑にカープから2人。こちらも納得の2人です。10傑のチーム内訳は「C:2人 / G:3人 / De:1人 / T:3人 / D:1人」と、なっています(よし、6球団いるな)。

セイバーを知ってもっと野球が楽しくなった…かなぁ?

セイバーメトリクスの理論を初めて齧ってみましたが、本の解説がとても丁寧で分かりやすかったことと、事前に統計学の初歩を(マンガで)学んでいたことで、考え方や数字の立て方は割とすんなり理解できました。

今シーズンは少し野球を見る目が変わりそうです。ただこれって幸せなことなのかな? と、いうのも正直なところ。

データで裏付けされたアレコレを知って、セイバーというモノサシで選手の能力を測ることは、魂のこもった熱い戦いを無機質に冷めた目で眺めることにもなりそう。

ちょっと寂しい。

セイバーメトリクスは、チーム運営を最適化するために「中の人」が活用するツールであって、ファンのためのものではないかも…。

「〇〇を4番にすれば得点力上がるぞ!」とか「今日の〇〇は、打たせて取るピッチングが冴えてたなー!」とか。
自分勝手に所感を抱くのは楽しいものですが、そんな純粋野球ファンにセイバーさんは囁きます

「誰が4番打っても同じだよ」
「打たせて取るピッチングなんて存在しないよ」

野球をアカデミックに追及したい方はとても楽しめるセイバーメトリクス
居酒屋でグダグダ野球談議を楽しみたい方は知らない方が良いセイバーメトリクス

近年は、トラッキングデータを活用してプレーの内容まで分析しようという動きもあります。
(トラックマンの導入についてはカープファンの間でも議論になりましたよね)

今後ますます活性化しそうなこの分野ですが、最後にイチローが引退会見で語った言葉を引用させていただき終えたいと思います。

「本来は頭を使わなきゃ出来ない競技なんですよ。でもそうじゃなくなってきているのが、どうも気持ち悪くて。野球の発祥はアメリカですから、その野球がそうなってきているということに、危機感を持ってきている人ってけっこういると思うんですよね。だから、日本の野球がアメリカの野球に追従する必要なんてまったくなくて、やっぱり日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしいなと思います。アメリカのこの流れは止まらないので。せめて日本の野球は、決して変わってはいけないこと、大切にしなくてはいけないものを大切にしてほしいなと思います」

イチロー現役引退会見より

Profile|プロフィール

凛子
凛子
東京都出身。幼い頃、父親の隣りで野球中継をボーっと眺めてるうちにルールを覚え、父親がボロクソ言いながらも応援していた赤い球団を愛するようになりました。東出ラブなJs時代を経て、ちょっぴり遊びを覚えたJc~Jk~Jd時代は野球への興味が薄れ球団愛も下火に…が、就職を機に真っ赤に再燃。交友関係にカープファンどころか野球ファンが一切いないという環境にも負けず、鯉に恋する毎日を送っています。