「広島カープ誕生物語」広島の人々とカープの濃密な鯉物語

著:中沢啓二
出版:DINO BOX

「はだしのゲン」の原作者として有名な中沢啓二氏が手掛けた、広島東洋カープ誕生~初優勝までの物語。

濃いです!(鯉だけに…) 昭和風味な絵のタッチ、ギャグ、ヤ〇ザ、広島弁による名言の数々など、中沢センセイじゃなきゃ描けない濃厚な“広島”で満ちています。

主人公・進の人生(14才~42才)と並行してカープの歴史が綴られます。

原爆で両親を亡くし、天蓋孤独で生きる少年・進。

超がつくほどの野球狂(原文ママ)で、米軍との賭け野球で生計を立てるなど、その才能は目を惹くものがあります。

それに目をつけるのが同じく野球狂の豆腐屋のおっさん・伝造。

親のいない進を養子にし、プロ野球選手に育てたいと考えます。そしてあわよくば同い年の娘・光子と一緒になってくれれば…と、いうのがプロローグ。

やがて、広島にプロ野球チーム「広島カープ」が誕生し、応援にのめり込む進や伝造たち。野球狂の男たちを軽蔑しながらも一本気な進に惹かれていく光子。

登場人物たちのドラマがしっかりと描かれ、被爆地となった広島の哀しみ、人々にとってカープが単なる応援の対象ではなく、自分たちの希望の象徴だったことがよく分かる内容です。

それにしても、進をはじめとする登場人物たちのカープに対する愛、それはもはや狂気w

・有名選手の家の前に座り込んでカープへ入団するよう直訴

・樽募金

・新入団選手の手厚い歓迎

・観戦時のヤジの数々

・etc.

読むと分かりますが、どれも病みつきになるほど濃い! 他にも縄を下げてのホームラン(詳細は本書にて)など、実話×中沢ワールドの濃縮度200%な広島が描かれます。

凛子的クライマックスは第3巻で描かれる『ファン3,000人暴動事件』。

詳細はぜひ本書をご一読いただければと思いますが、

わりゃ殺しゃげたるぞ

石本―(←監督)審判を殺せー

アンパイア殺しゃげたれー

このくそったれポールを引き抜け

それー審判をみな殺しじゃ

「仁義なき戦い」の有名キャッチコピー 殺れい! 殺ったれい! も霞むようなインパクトワードが続々飛び出します(汗)

3ページ内に湧き出る名セリフの数々に、現代に生きるカープ女子・凛子は静かに目を閉じ、往時のカープファンに想いを馳せるのです…。

カープにまつわる逸話はノンフィクションと聞きますが、球団創設期の窮乏ぶりは本当に可哀そう。

資金集めの場に顔を出した選手が得意の歌を披露する場面は切ない。いわゆる男芸者の役目を果たさなきゃいけなかった彼らはさぞ情けない気持ちになったんじゃないかなぁ。

そんな時期を支え、球団存続に尽力した関係者ならびに市民の方々には頭が下がります。現在のカープの繁栄があるのも彼らがあってこそ。もしも当時の選手たちが、MAZDAスタジアムの大観衆を見たら、どんな感想を漏らすんでしょうか。

読めばもっとカープが愛しくなる良書です。胸やけしそうに濃厚な広島カープの物語を堪能したい方はぜひ♪

凛子的には、キャッチボールでお互いの愛を確かめ合う、進と光子のラブパートもお気に入りです。

<了>

Profile|プロフィール

凛子
凛子
東京都出身。幼い頃、父親の隣りで野球中継をボーっと眺めてるうちにルールを覚え、父親がボロクソ言いながらも応援していた赤い球団を愛するようになりました。東出ラブなJs時代を経て、ちょっぴり遊びを覚えたJc~Jk~Jd時代は野球への興味が薄れ球団愛も下火に…が、就職を機に真っ赤に再燃。交友関係にカープファンどころか野球ファンが一切いないという環境にも負けず、鯉に恋する毎日を送っています。